半の汽車には乗らなくちゃ成らない。今夜はいずれ酒だろうから、僕はあまり難有くない方だけれど――それに、明日はいよいよ演説をやる日取だ」
「それにしても、まあユックリして行ってくれ給え」
「あの時計は宛《あて》に成らない」と西は次の部屋に掛けてある柱時計と自分のとを見比べた。「大変後れてるよ」
「アア吾家《うち》のは後れてる」と三吉も答えた。
お雪はビイルに有合せの物を添えて、そこへ持って来た。「なんにも御座いませんけれど、どうか召上って下さい」と彼女が言った。三吉も田舎料理をすすめて、久し振で友人をもてなそうとした。
「こりゃどうも恐れ入ったねえ。僕は相変らず飲めない方でねえ」と西は言った。「しかし、気が急《せ》いて不可《いけない》から、遠慮なしに頂きます」
三吉は記者にもビイルを勧めた。「長野の新聞の方には未だ長くいらっしゃる御積りなんですか」
「そうですナア、一年ばかりも居たら帰るかも知れません……是方《こっち》に居ても話相手は無し、ツマリませんからね……私は信濃《しなの》という国には少許《すこし》も興味が有りません」こう記者が答えた。
西はめずらしそうに、牛額《うしびたい》
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