得るという訳なんだろう……ところが人間の頭数が増えて来たから、繁殖ということばかりが仕事で無くなって来たサ――だから、自分の好きな熱を吹いて、暮しても、生きていられるのが今の世の中サ」
「何だか僕等の生涯は夢らしくて困る」
「いずくんぞ知らん、日本国中の人の生涯は皆な夢ならんとはだ」
三吉は黙って、この二人の客の話を聞いていた。その時記者は沈んだ、痛ましそうな眼付をして、西の方を見た。西は目を外《そら》した。しばらく、客も主人《あるじ》も煙草《たばこ》ばかり燻《ふか》していた。
お房が覗《のぞ》きに来た。
「房《ふう》ちゃん、被入《いら》っしゃい」
と西が見つけて呼んだ。お房は恥かしそうに、母のかげに隠れた。やがて母に連れられて、菓子皿の中にある物を貰いに来た。
「お客様にキマリが悪いと見えて、母さんの後であんがとうしてます」と言ってお雪は笑った。
西は二度も三度も懐中時計を取出して眺めた。
「君は何時《なんじ》まで居られるんだい。なんなら泊って行っても可いじゃないか」と三吉が言った。
「ああ難有《ありがと》う」と西は受けて、「今夜僕の為に歓迎会が有るというんで、どうしても四時
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