今でも分らないんだろう」と西が軽く笑った。
記者は玉子色の外套の隠袖《かくし》へ両手を入れたまま、反返《そりかえ》って笑った。やがて、すこし萎《しお》れて、前曲《まえこご》みに西の方を覗《のぞ》くようにしながら、
「その頃と見ると、君も大分変った」
と言われて、西は黙って記者を熟視《みつめ》た。三吉は二人の周囲《まわり》を歩いていた。
三人は線路を越して、下りの汽車を待つべきプラットフォムの上へ出た。浅間へは最早雪が来ていた。
「寒い寒い」と西は震えながら、「僕は汽車の中で凍え死ぬかも知れないよ」
「すこし歩こう」と三吉が言出した。
「そうだ。歩いたら少しは暖かに成る」と言って、西は周囲《あたり》を眺め廻して、「この辺は大抵僕の想像して来た通りだった」
三吉は指《ゆびさ》して見せた。「あそこに薄《うっ》すらと灰紫色に見える山ねえ、あれが八つが岳だ。ずっと是方《こっち》に紅葉した山が有るだろう、あの崖《がけ》の下を流れてるのが千曲川《ちくまがわ》サ」
「山の色はいつでもあんな紫色に見えるのかい。もっと僕は乾燥した処かと思った」
「今日は特別サ。水蒸気が多いんだね。平常《いつも》は
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