がお》には、親より外に見せないような可憐《あどけな》さがあった。
「兄貴の家を見たら、俺もウカウカしてはいられなく成って来た」
 こう三吉が言って、子供をお雪の手に渡した。
「房ちゃん」と下婢はそこへ来て笑いながら言った。「父さんに股眼鏡《まためがね》してお見せなさい」
「止《よ》せ、そんな馬鹿な真似を」
 と三吉が言ったが、お房は母の手を離れて、「バア」と言いながら後向に股の下から母の顔を覗《のぞ》いた。
「隣の叔母さんが、房ちゃんの股眼鏡するのは復《ま》た直に赤さんの御出来なさる証拠だッて」
 こう下婢が何の気なしに言った。三吉夫婦は思わず顔を見合せた。


 夫婦は眠い盛りであった。殊《こと》に三吉が旅から帰って来てからは、下婢まで遅く起きるように成った。どうかすると三吉の学校へ出掛けるまでに、朝飯の仕度の間に合わないことも有った。
 朝の光が薄白く射して来た。戸の透間《すきま》も明るく成った。一番早く眼を覚《さま》すものは子供で、まだ母親が知らずに眠っている間に、最早《もう》床の中から這出《はいだ》した。
 子供は寝衣のままで母の枕頭《まくらもと》に遊んでいた。お雪は半分眠りな
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