《うわさ》をした。
東京から三吉は種々な話を持って帰って来た。旅に出て帰って来る時ほど、彼も家を思い妻子を思うことはなかった。
「房ちゃん、御土産《おみや》が有るぜ」
と三吉は旅の鞄《かばん》をそこへ取出した。
「父さんが御土産を下さるッて。何でしょうね」とお雪は子供に言って聞かせて、鞄の紐《ひも》を解《と》きかけた。「まあ、この鞄の重いこと。父さんの荷物は何時《いつ》でも書籍《ほん》ばかりだ」
下婢《おんな》は茶を運んで来た。三吉は乾いた咽喉《のど》を霑《うるお》して、東京にある小泉の家の変化を語り始めた。兄の実が計画していた事業は驚くべき失敗に終ったこと、更に多くの負債を残したこと、銀行の取引が停止されたこと、これに連関して大将の家まで破産の悲運に陥りかけたこと、それから実の家ではある町中《まちなか》の路地のような処へ立退《たちの》いたことなどを話した。
「姉さんの姉さんで、ホラ、お杉さんという人が有ったろう。あの人も兄貴の家で亡くなった」と三吉は附添《つけた》した。
「宗さんはどうなさいました」とお雪が聞いた。
「宗さんか。あの人は世話してくれるところが有って、そっちの方へ
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