なかった。
「あんまり貴方も考え過ぎるんでしょう」
とお雪は冷かに微笑《ほほえ》んで、「ちと曾根さんの方へでも遊びに行ってらしたらどうです」
「余計な御世話だ」と三吉は力を入れて言った。「お前は直に、曾根さん、曾根さんだ。それがどうした。お前のような狭い量見で社会《よのなか》の人と交際が出来るものか」こう彼は言おうとしたが、それを口には出さなかった。
「だって、こうして引籠《ひっこ》んでばかりいらっしゃらないで、御出掛に成ったら可いでしょうに……」
「行こうと、行くまいと、俺の勝手じゃないか」
土塀の外の方では、近所の子供が集って李を落す音がした。
「房ちゃん」とお雪は子供を抱〆《だきしめ》るようにして、「父さんに嫌《きら》われたから、彼方《あっち》へ行きましょう」
力なげにお雪は夫の傍を離れた。三吉は、「妙なことを言うナア」と口の中で言ってみて、復た考え沈んだ。
暮れてから、三吉と直樹とは奥の部屋に洋燈《ランプ》を囲んで、一緒に読んだり話したりした。
急にお雪は嘔気《はきけ》を覚えた。縁側の方へ行って吐いた。
「姉さん、どうなすったんですか」
と直樹はお雪の側へ寄って、背
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