《どべい》に近く、大きな李《すもも》の樹があった。沢山|密集《かたま》って生《な》った枝からは、紫色に熟した実がポタポタ落ちた。三吉は沈思を破られたという風で、子供の方を見て、
「なにも、俺は面白い家庭なぞを造ろうと思って掛ったんじゃない――初から、艱難《かんなん》な生活を送る積りだ」
「でもこの節は毎日々々考えてばかりいらっしゃるじゃ有りませんか」とお雪は恨めしそうに、「ああ、家を持ってこんな風に成ろうとは思わなかった」
「じゃ、こうだろう、お前のは平素《しょっちゅう》芝居でも見られるような家へ行きたかったんだろう」
「そう解《と》っちゃ困りますよ。芝居なんか見たか有りませんよ。直に貴方《あなた》はそれだもの。なんでも私の為《す》ることは気に入らない。第一、貴方は何事《なんに》も私に話して聞かせて下さらないんですもの」
「こうして話してるじゃないか」と三吉は苦笑《にがわらい》した。
「話してるなんて……」と言って、お雪は子供の顔を眺めて、「ああ、もっと悧好《りこう》な女に生れて来れば好かった。私も……私も……この次に生れ変って来たら……」
「生れ変って来たら、どうする」
お雪は答え
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