《おんもと》よりも手紙なきゆえ、定めし子供を控え手もすくなく其日々々のことに追われ、暇《いとま》なき身《からだ》とは御察し申しながら、父上|着《ちゃく》なされ候てより未だ一通の手紙もまいらず、御許のことのみ気に懸り、心許なくぞんじ居り候。奈何《いかが》いたし候や。あるいは御許の心変りしやとも考え、斯《か》くては定めし夫に対しても礼義崩れ、我儘《わがまま》なることもなきやと、日々心痛いたし居り候。御許ばかりは左様の事なきかとは思い居り候えども、人間の我儘はいずれにもあることなれば、実に安心の成らぬものに御座候。それにしても、御許にかぎりて、左様なことは有るまじくと存じ居り候。何につけ善悪《よしあし》とも御便り下されたく候。
――お福も最早《もはや》学校も間近に相成り候。長々の間、定めて御心を懸け下され候ことと、ありがたく、父上ともども喜び居り候。
――就《つ》いては、先日より何か送りたくと存じながら、彼《あれ》や是《これ》やにひかされて今日まで延引いたし、誠に不本意に御座候。只今小包便にて、乾塩引《かんしおびき》少々、鰹節《かつおぶし》五本、豆せんべい、松風いずれも少々、前掛一枚、右
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