意をして置いて、一緒に食おうともしなかった。裏の流の水草に寄る螢《ほたる》は、桑畠の間を通って、南向の部屋に近い垣根の外まで迷って来た。お雪は濡縁《ぬれえん》のところに立って、何の目的《めあて》もなく空を眺めた。隣のおばさんは鎌《かま》を腰に差して畠《はたけ》の方から帰って来る。桑を背負った男もその後から会釈して通る……
「一筆《ひとふで》しめし上げ※[#「※」は「まいらせそろ」の略記号、115−9]《まいらせそろ》。さてとや暑さきびしく候《そうろう》ところ、皆様には奈何《いかが》御暮しなされ候や。私よりも一向音信いたさず候えども、御許《おんもと》よりも御便り無之《これなく》候故、日々御案じ申上げ候。御蔭さまにて当方は一同無事に日を送り居り候。御安心|被下《くだされ》たく候。私こと、毎日々々そこここと手伝見舞にまいり、いそがしく、それに仕事の方も間に合せたくと存じ、それ着物の浸抜《しみぬき》、それ洗張《あらいはり》と、騒ぎにばかり日を暮し、未だ父上の道中着物ほどきもせずに居るような仕末に御座候。
――私よりの御無沙汰《ごぶさた》、右の次第にて、まことに申訳なく候えども、あまり御許
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