こうして一緒に成ったということは、三吉を喜ばせたばかりでは無かった。「姉さん、姉さん」と呼ばれるお雪も心から喜んで、この青年を迎えた。退屈でいるお福も好い話相手を得た。遽《にわ》かに三吉の家では賑《にぎや》かに成った。
 翌日から、直樹は殆《ほと》んど家の人であった。子供を可愛がることも、この青年の天性に近かった。お福は、娘でありながら、直樹のようには子供を好かなかった。
「房《ふう》ちゃん、房ちゃん」と言って、子供を背中に乗せて、家の内を歩く直樹の様子を眺《なが》めると、三吉は昔時《むかし》自分が直樹の家に書生した時代のことを思出さずにいられなかった。
「僕も、ああして、よく直樹さんを背負って歩いたものだ」
 と三吉は妻に話した。直樹は生れ落ちるから、三吉の手に抱かれた人である。


「曾根さんが先刻《さっき》訪ねていらっしゃいましたよ」とお雪は入口の庭のところで張物をしながら言った。
 屋外《そと》から入って来た三吉は、妻の顔を眺めた。何時《いつ》山の上へ着いたとも、何処《どこ》へ宿を取ったとも、判然《はっきり》知らせて寄《よこ》さないような曾根が、こうして自分等の家へ訪ねて来たと
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