おんな》の別離《わかれ》を歌ったものだった。メンデルソオンの曲だ。その一節を、曾根は極く小さい震えるような声で歌って聞かせた。音楽者の癖で、曾根が手の指は無心に洋琴《ピアノ》の鍵盤に触れるように動いた。これはそう旧《ふる》いことでも無かった。急に、三吉はこの人と親しみを増すように成った。十年一日のような男同士の交際とは違って、何故《なぜ》かこう友情を急がせるようなところもあった。
垣根に這《は》わせた南瓜《かぼちゃ》は最早盛んに咲く頃であった。その大きな黄色い花に添うて、三吉は往来の方から入って来た。家には珍しい客が待っていた。
「直樹さん――」思わず三吉は微笑《ほほえ》んで言った。
「兄さんのお留守へやって参りました」と直樹も出て迎えた。
この中学生は、三吉が一緒に木曾路《きそじ》を旅した頃から比べると、見違えるほど成人していた。丁寧な口の利《き》きようからして、いかにも都会に育った青年らしい。丁度この直樹位の年頃の生徒を毎日学校で相手にしている三吉には、余計にその相違が眼についた。直樹は父の許を得て、暑中休暇を三吉の家で送ろうとして来たのである。
日頃親身の弟のように思う人が
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