。お雪は曾根を知ろうともしなかった。どうしてこう女同志は友達に成れないものかしらん、と三吉は嘆息することも有った。
 三吉は妻の狭い考えを笑った。そして、男とか女とかということを離れて、もっと種々な人を知りたいと思った。
「何卒《どうぞ》、御|逢《あ》いでしたら宜敷《よろしく》」
 こういう妻の言葉を聞捨てて、三吉は出て行った。暑い日であった。


 曾根の宿を探しあぐんで、到頭三吉は分らず仕舞に自分の家の方へ引返した。ギラギラするような日光を通して見た避暑地の光景《ありさま》は、三吉の心を沈着《おちつ》かせなかった。彼は種々な物の象《かたち》を眼に浮べながら帰って来た――ところどころに新築された別荘、赤く塗った窓、蕃牡丹畠《キャベツばたけ》……それから古い駅路の両側にある並木、その蔭を往来する避暑客、金色な髪の子供を連れて歩く乳母……
 三吉は又、はじめて曾根を知った当時のことを想《おも》いながら帰って来る人であった。多勢若い男や女の居る部屋で、ふと曾根は三吉の傍へ来て、亡くなった友達のことを尋ねた。机の上には、短い曲の譜があった。「神の意《こころ》のままに」という題で、男女《おとこ
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