家へは、復《ま》たお福がやって来ていた。
 丁度三吉も半日しか学校のない日で、外出する用意をして、炉辺で昼飯《ひる》をやった。
「何処《どちら》へ?」とお雪は給仕しながら尋ねてみた。
「曾根さんが来てるか行って見て来ようと思う」こう三吉は答えた。
「最早いらしったんでしょうか」とお雪は夫の顔を眺める。
「居るか居ないか解らんがね、まあ遊びがてら行って見て来る」
 三吉が曾根を妻に紹介して、二人の女の間を結び付けようとしたのは、家庭の友として恥かしからぬ人と思ったからで。曾根は音楽に一生を托《たく》しているような婦人で、三吉が向いて行こうとする方面にも深く興味を有《も》っていた。言わば、三吉には、自分を知ってくれる人の一人と思われた。この思想《かんがえ》が彼を喜ばせた。
 しかし、お雪はあまり喜ばないという風であった。三吉が曾根のことを言って、彼女の身内が悲惨な最期を遂げた時に、それを独《ひと》りで仕末したという話をして、「どうして、お前なかなかシッカリモノだぜ」などと言って聞かせると、「その話を聞くのはこれで三度目です」とか何とかお雪の方では笑って、「最早《もう》沢山」という眼付をする
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