と老人はホッと息を吐《つ》くように言った。
南向の部屋の柱には、新しい時計が懸った。そして音がし出した。若夫婦へ贈る為に、わざわざ老人が東京から買って提《さ》げて来たのである。これは母から、これは名倉の姉から、これは※[#「※」は「○の中にナ」、97−7]の姉から、と種々な土産物《みやげもの》がそこへ取出された。
煤《すす》けた田舎風の屋《うち》の内《なか》を見て廻った後、老人は奥の庭の見える座敷に粗末な膳《ぜん》を控えた。お雪やお福のいそいそと立働くさまを眺めたり、水車の音を聞いたりしながら、手酌でちびりちびりやった。
「何卒《どうぞ》もうすこしも関《かま》わずに置いて下さい。私はこの方が勝手なんで御座いますから」
と老人が言った。何がなくともお雪の手製《てづくり》のもので、この酒に酔うことを楽みにして来たことなどを話した。
三吉は炉辺へお雪を呼んで、
「何かもうすこし阿爺さんに御馳走《ごちそう》する物はないかい」
「あれで沢山です」とお雪が言う。
「こんな田舎じゃ何物《なんに》も進《あ》げるようなものが無い。罐詰《かんづめ》でも買いにやろうか」
「宜《よ》う御座んすよ。そ
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