ら、三吉はお雪から身上《みのうえ》の話を聴取ろうと思った。夫婦は不思議な顔を合せた――今まで合せたことのない顔を合せた――結婚する前には、互に遠くの方でばかり眺めていたような顔を……
「勉さんとお前とはどういう関係に成っていたのかネ」三吉は何気なく言出した。
「どういうとは?」とお雪はすこし顔を紅めて。
「家の方でサ。そういうことはズンズン話して聞かせる方が可い」
 その時、三吉は妻の口から、勉と彼女とは親が認めた間柄であること、夫婦約束を結ばせたではないが親達の間だけにそういう話のあったこと、店の番頭に邪魔するものが有って、あること無いこと言い触らして、その為に勉の方の話は破れたことなどを聞いた。
 済んだことは済んだこと、こう妻は言い消して了おうとした。夫はそれでは済まされなかった。
 寂しい心が三吉の胸の中に起って来た。その心は、女をいたわるということにかけて、自分もまた他の男に劣るものではないということを示させようとした。その日、三吉は種々と細君の機嫌《きげん》を取った。機嫌を取りながら、悶《もだ》えた。


 間もなく勉から返事が来た。一通は三吉へ宛て、一通はお雪へ宛ててあっ
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