し候。此《この》手紙、決して悪《あ》しき心を持ちて申上ぐるには候わず。何卒々々心静かに御覧下されたく候……」
 お雪は鋭く夫の顔を眺めて、復た耳を澄ました。
「実は、君より妻へ宛《あ》てたる御書面、また妻より君へ宛てたる手紙、不図《ふと》したることより生の目に触れ、一方には君の御境遇をも審《つまびらか》にし、一方には……妻の心情をも酌取《くみと》りし次第に候……」
 お雪は耳の根元までも紅《あか》く成った。まだ世帯慣れない手で顔を掩《おお》うようにして、机に倚凭《よりかか》りながら聞いた。
「斯《か》く申す生こそは幾多の辛酸にも遭遇しいささか人の情《なさけ》を知り申し候……されば世にありふれたる卑しき行のように一概に君の涙を退くるものとのみ思召《おぼしめ》さば、そは未だ生を知らざるにて候……否……否……」
 どうかすると三吉の声は沈み震えて、お雪によく聞取れないことがあった。
「斯《か》く君の悲哀《かなしみ》を汲《く》み、お雪の心情をも察するに、添い遂げらるる縁《えにし》とも思われねば、一旦は結びたる夫婦の契《ちぎり》を解き、今|迄《まで》を悲しき夢とあきらめ、せめては是世《このよ》に
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