らない青年の面影《おもかげ》もあった。
「勉さんねえ」
とお福は名倉の店に勤めている人のを幾枚か取出して眺めた。
「福ちゃん」
とお雪は妹を呼んだ。返事が無かった。お福はよく上《あが》り端《はな》の壁の側や物置部屋の風通しの好いところを択《えら》んで、独《ひと》りで読書《よみかき》するという風であったが、何処《どこ》にも姿が見えなかった。
「福ちゃん」
と復《ま》たお雪は呼んで探してみた。
南向の部屋の外は垣根に近い濡縁《ぬれえん》で、そこから別に囲われた畠の方が見える。深い桑の葉の蔭に成って、妹の居る処は分らなかったが、返事だけは聞える。
お雪は入口の庭から裏の方へ廻って、生い茂った桑畠の間を通って、莢豌豆《さやえんどう》の花の垂れたところへ出た。高い枯枝に纏《まと》い着いた蔓《つる》からは、青々とした莢が最早《もう》沢山に下っていた。
「福ちゃん、福ちゃんッて、探してるのに――そんなところに居たの」こうお雪が声を掛けた。
お福は畠の間から姉の方を見て、「今ね――一寸《ちょっと》裏へ出て見たら、あんまり好く生《な》ってるもんだから。すこし取って行って進《あ》げようと思
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