して、彼女は新婚の生涯を始めた。奉公人を多勢使って贅沢《ぜいたく》に暮して来た日までのことに比べると、すべて新たに習うようなものである。とはいえ、お雪は壮健《じょうぶ》な身体を持っていた。彼女は夫を助けて働けるだけ働こうと思った。
鍛冶屋《かじや》に注文して置いた鍬《くわ》が出来た頃から、三吉は学校から帰ると直ぐそれを手にして、裏の畠の方へ出た。彼は家の持主から桑畠の一部を仕切って借りた。そこは垣根に添うた、石塊《いしころ》の多い、荒れた地所で、野菜畠として耕す前には先ず堅い土から掘起して掛らなければ成らなかった。
俗に鉄道草と称《とな》える仕末に負えない雑草が垣根の隅《すみ》に一ぱい枯残っていた。それを抜取るだけでも、三吉はウンザリして了《しま》った。その他の雑草で最早《もう》根深く蔓延《はびこ》っているのも有った。青々とした芽は、其処《そこ》にも、是処《ここ》にも、頭を擡《もちあ》げていた。
労苦する人達の姿が三吉の眼に映り初めたのは、橋本の姉の家へ行く頃からであった。木曾に居る時も、幾分《いくら》か彼はその心地《こころもち》を紙に対《むか》って書いた。こうして僅かばかり
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