《ちか》いところに、それがあります。
『朝《あさ》を思《おも》ひ、また夕《ゆふ》を思《おも》ふべし。』
と芭蕉翁《ばせをおう》は教《をし》へた人《ひと》です。
二四 お百草《ひやくさう》
御嶽山《おんたけさん》の方《はう》から歸《かへ》る人達《ひとたち》は、お百草《ひやくさう》といふ藥《くすり》をよく土産《みやげ》に持《も》つて來《き》ました。お百草《ひやくさう》は、あの高《たか》い山《やま》の上《うへ》で採《と》れるいろ/\な草《くさ》の根《ね》から製《せい》した練藥《ねりぐすり》で、それを竹《たけ》の皮《かは》の上《うへ》に延《の》べてあるのです。苦《にが》い/\藥《くすり》でしたが、お腹《なか》の痛《いた》い時《とき》なぞにそれを飮《の》むとすぐなほりました。お藥《くすり》はあんな高《たか》い山《やま》の土《つち》の中《なか》にも藏《しま》つてあるのですね。
二五 檜木笠《ひのきかさ》
麥藁《むぎわら》でさへ帽子《ばうし》が出來《でき》るのに、檜木《ひのき》で笠《かさ》が造《つく》れるのは不思議《ふしぎ》でもありません。
木曾《きそ》は檜木《ひのき》[#「檜木
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