機《はた》が置《お》いてありました。
『トン/\ハタリ、トンハタリ。』祖母《おばあ》さんの筬《をさ》が動《うご》く度《たび》に、さういふ音《おと》が聞《き》こえて來《き》ます。父《とう》さんが玄關《げんくわん》の廣《ひろ》い板《いた》の間《ま》に居《ゐ》て、その筬《をさ》の音《おと》を聞《き》きながら遊《あそ》んで居《を》りますと、そこへもよくめづらしいもの好《ず》きの雀《すずめ》が覗《のぞ》きに來《き》ました。
一六 梨《なし》や柿《かき》はお友達《ともだち》
父《とう》さんのお家《うち》の庭《には》にはいろ/\な木《き》が植《うゑ》てありました。父《とう》さんはその木《き》を自分《じぶん》のお友達《ともだち》のやうに想《おも》つて大《おほ》きくなりました。お前達《まへたち》の祖父《おぢい》さんのお部屋《へや》の前《まへ》にあつた古《ふる》い大《おほ》きな松《まつ》の樹《き》も、表《おもて》の庭《には》にあつた椿《つばき》の木《き》もみんな父《とう》さんのお友達《ともだち》でした。その椿《つばき》の木《き》の側《そば》には梨《なし》の木《き》もあつて、毎年《まいねん》大《お
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