の川《かは》は烏川《からすがは》といふ川《かは》だと聞《き》きました。
まあ、父さんも、どんなに幼少《ちひさ》い子供《こども》だつたでせう。東京行《とうきやうゆき》の馬車《ばしや》の中《なか》には、一緒《いつしよ》に乘合《のりあは》せた他所《よそ》の小母《をば》さんもありました。その知《し》らない小母《をば》さんが旅《たび》の袋《ふくろ》からお菓子《くわし》なぞを出《だ》しまして、それを父《とう》さんにおあがりと言《い》つて呉《く》れたこともありました。いくら乘《の》つても乘《の》つても、なか/\東京《とうきやう》へは着《つ》かないものですから、しまひには父《とう》さんも馬車《ばしや》に退屈《たいくつ》しまして、他所《よそ》の小母《をば》さんに抱《だ》かれながらその膝《ひざ》の上《うへ》に眠《ねむ》つてしまつたことも有《あ》りました。

   七〇 終《をはり》の話《はなし》

こんな風《ふう》にして父《とう》さんは自分《じぶん》の生《うま》れたふるさとを幼少《ちひさ》な時分《じぶん》に出《で》て來《き》たものです。それから長《なが》い年月《としつき》の間《あひだ》を置《お》いては、木
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