つ》をつけて行《ゆ》く時《とき》はなか/\骨《ほね》が折《を》れますが、一|日《にち》の仕事《しごと》をすまして山道《やまみち》を歸《かへ》つて來《く》るのは樂《たのし》みなものですよ。』
さう馬《うま》が言《い》つて、さも自慢《じまん》さうに首《くび》について居《ゐ》る鈴《すゞ》を鳴《な》らして見《み》せました。父《とう》さんのお家《うち》の前《まへ》は木曾街道《きそかいだう》と言《い》つて、鐵道《てつだう》も汽車《きしや》もない時分《じぶん》にはみんなその道《みち》を歩《ある》いて通《とほ》りました。高《たか》い山《やま》の上《うへ》でおまけに坂道《さかみち》の多《おほ》い所《ところ》ですから荷物《にもつ》はこの通《とほ》り馬《うま》が運《はこ》びました。どうかすると五|匹《ひき》も六|匹《ぴき》も荷物《にもつ》をつけた馬《うま》が續《つゞ》いて父《とう》さんのお家《うち》の前《まへ》を通《とほ》ることもありました。男《をとこ》や女《をんな》の旅人《たびびと》を乘《の》せた馬《うま》が馬方《うまかた》に引《ひ》かれて通《とほ》ることもありました。父《とう》さんの聲《こゑ》を掛《か》
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