四人もおげんのところへ御辞儀に来た。
「どうも太郎や次郎の大きくなったのには、たまげた。三吉もよくお前さん達の噂《うわさ》をしていますよ。あれも大きくなりましたよ」
とおげんは熊吉の子供に言って、それから弟の居るところへ一緒に成った。
しばらく逢《あ》わずにいるうちに直次もめっきり年をとった。おげんは熊吉を見るのも何年振りかと思った。
「姉さんの旦那さんが亡くなったことも、私は旅にいて知りました。」
と熊吉は思出し顔に言ったが、そういう弟は五十五日も船に乗りつづけて遠いところから帰って来た人で、真黒に日に焼けていた。
「ほんとに、小山の姉さんはお若い。もっとわたしはお年寄になっていらっしゃるかと思った」
とそこへ来て言って、いろいろともてなしてくれるのは直次の連合であった。このおさだの言うことはお世辞にしても、おげんには嬉しかった。四人の小さな甥達はめずらしいおばあさんを迎えたという顔付で、かわるがわるそこへ覗《のぞ》きに来た。
おげんが養子の兄は無事に自分の役目を果したという顔付で、おげんの容体などを弟達に話して置いて間もなく直次の家を辞して行った。その晩から、おげんは直次
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