るものなり、希望爰に存し、進歩爰に萌《きざ》すなり、之なくんば凡ての事皆な虚偽なり。
文学は人間と無限とを研究する一種の事業なり、事業としては然り、而して其起因するところは、現在の「生」に於て、人間が自らの満足を充さんとする欲望を填《ふさ》ぐ為にあるべし。文学は快楽を人生に備ふるものなり、文学は保全を人生に補ふものなり。然れども歴史上にて文学を研究するには、そを人生の鏡とし、そを人生の欲望と満足の像影として見ざるべからず。人生は文学史の中に其骸骨を留むるものなり、その宗教も、その哲学も、文学史の中に散漫たる形にて残るもの也、その欲望も、其満足も、文学史の上には蔽ふべからざる事実となるなり、而して吾人は、その欲望よりも、其満足よりも、其状態よりも、第一に人生の精神を知らざるべからず、吾人は観察[#「観察」に傍点]なるものゝ甚だ重んずべきを認む、然れども状態《ステート》を観察するに先ちて、赤裸々の精神を視《み》ざるべからず、認識せざるべからず、然かる後にその精神の活動を観察せざる可からず。
精神は終古一なり、然れども人生は有限なり、有限なるものゝ中にありて無限なるものゝ趣きを変ゆ。東洋
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