万物の声と詩人
北村透谷
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)蚯蚓《みゝず》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)万物|自《おのづ》から
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)自覚[#「自覚」に傍点]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)廷々《てい/\》
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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万物|自《おのづ》から声あり。万物自から声あれば自から又た楽調あり。蚯蚓《みゝず》は動物の中に於て醜にして且つ拙なるものなり。然れども夜深々窓に当りて断続の音を聆《き》く時は、人をして造化の生物を理する妙機の驚ろくべきものあるを悟らしむ。自然は不調和の中に調和を置けり。悲哀の中に欣悦を置けり。欣悦の裡に悲哀を置けり。運命は人を脅かすなり、而して人を駆つて怯懦卑劣なる行為をなさしむるなり。情慾は人を誘ふなり、而して人を率ゐて我儘気随のものとなすなり。自然は広漠たる大海にして、人生は廷々《てい/\》たる浮島に似たり。風浪常時に四囲を襲ひ来りて、寧静《ねいせい》なる事は甚だ稀なり。四節は追
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