て千載の事を慮《はか》るもの、同じく之れ大暮の同寝《どうしん》。霜は香菊を厭《いと》はず、風は幽蘭を容《ゆる》さず。忽《たちま》ち逝《ゆ》き忽ち消え、※[#「二点しんにょう+貌」、第3水準1−92−58]冥《ばくめい》として踪《たづ》ぬべからざるを致す。
 墳墓何の権かある。宇内《うだい》を睥睨《へいげい》し、日月を叱※[#「口+它」、第3水準1−14−88]《しつた》せし、古来の英雄何すれぞ墳墓の前に弱兎《じやくと》の如くなる。誰か不朽といふ字を字書の中に置きて、而《しか》して世の俗眼者流をして縦《ほしいまゝ》に流用せしめたる。嗚呼《あゝ》墳墓、汝の冷々たる舌、汝の常に餓ゑたる口、何者をか噬《か》まざらん、何物をか呑まざらん、而して墳墓よ、汝も亦た遂に空々漠々たり、水流滔々として洋海に趣《おもむ》けど、洋海は終に溢れて大地を包まず、冉々《ぜん/\》として行暮する人世、遂に新なるを知らず、又た故《こ》なるを知らず。
 花には花に弄《ろう》せられざるもの誰ぞ、月には月に翫《もてあそ》ばれざるもの誰ぞ、風狂も亦た一種の変調子、風狂も亦た一種の変調子なりとせば、人間いかにして変調子ならざる事
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