qの社界改良の熱情に一方ならぬ同情を有《たも》つものなり。然れどもわれは寧《むし》ろ十返舎の為に泣《なか》ざるを得ざる悲痛あり、彼の如き豪逸なる資性を以て、彼の如きゼヌインのウイットを以て、而して彼の如くに無無無[#「無無無」に白丸傍点]の陋巷《ろうかう》に迷ひ、無無無[#「無無無」に白丸傍点]の奇語を吐き、無無無[#「無無無」に白丸傍点]の文字を弄《ろう》して、遂に無無無[#「無無無」に白丸傍点]の代表者となつて終らしめたるもの、抑《そもそ》も時代の罪にあらずして何ぞや。
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(本論は次号にうつりて、我が畏敬する天知子と愛山生の両兄によりて評論界を騒がしたる「遊侠」の問題に入り、更に「粋」といふ題目に進みて卑見を吐露すべし。)
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(第二)
老人は古《いにし》へを恋ひ、壮年は己れの時に傲《おご》る、恋ふるものは恋ふべきの迹《あと》透明にして而して後に恋ふるにあらず、傲る者は傲るべき理の照々たるが故に傲るにあらず。彼は「時」に欺《あざむ》かれ尽くして古時《いにしへ》を思ひ、これは「時」に弄せらるゝを知らずして空望を懸く。気|盈《
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