異にするが如しと雖《いへども》、要するに二岐に分れたる同根の観念なり。
ギヨオテのメヒストフエリスを捕捉して其曲中に入らしむるや、必らずしも斯《かく》の如き他界の霊物実存せりと信ぜしにもあらざるべし、余が他界に対する観念を論じて、詩歌の世界に鬼神を用ふる事を言ふも、強《し》いて他界の鬼神を惑信するにはあらず。詩歌の世界は想像の世界にして、霊あらざるものに霊ありとし、人ならざるものに人の如くならしめ、実ならざるものを実なるが如くし、見るべからざるものを見るべきものとするは、此世界の常なり、万有教あらざる前に此世界には既に万有教の趣味あり、形而上の哲学あらざる前に此世界には既に形而上の観念あり、想像は必らずしもダニヱルの夢の如くに未来を暁《さと》らしむるものにあらざるも、朝に暮に眼前の事に齷齪《あくさく》たる実世界の動物が冷嘲する如く、無用のものにはあらざるなり。漠々茫々たる天地、英国の大詩人をして、
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There are more things in heaven and earth,
Horatio,
Than are dreamt of in your
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