督教的思想より来り、一は無常迅速の仏教思想より来れり。
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But that the dread of something after death,――
The undiscover'd country, from whose bourn
No traveller returns,―― puzzles the will,
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の如きに至りては、到底彼国の観念に見るを得べくして我想界に求むる事を得ず。是も亦た我文学に他界に対する観念の欠乏せるを告ぐるものなり。
忍月居士|嘗《かつ》て外来物を論じて、詩人が外来物の補助を借り方便にすべき事を言ひたる事ありしが、他界に対する観念は補助又は方便にすと言ふが如き卑下なる者にあらず。恰《あたか》も潜者の水底に沈みて真珠を拾ふが如く自然界の奥に闖入《ちんにふ》し、冥想を以て他界の物を攫取《くわくしゆ》し来るを以て詩人の尊む可きところとはするなり。居士が外来物を方便にする一例として篁村氏の「良夜」を引きたるが如きは、尤も我心を得ず。さはあれ是も亦た我国文学に他界に対する観念の乏しきを証するに足るなり。
禅学
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