思想の聖殿
北村透谷

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)暗濛《あんもう》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|是《ヱー》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「鬥<((卯/亞の下半分)+斤)」、第3水準1−94−31]
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 思想の領地は栄光ある天門より暗濛《あんもう》たる深谷に広がれり。羽衣を着けたる仙女も此領地の中に舞ひ、悪火を吐く毒鬼も此の裡に棲《す》めり。思想の境地は実に天の与へたる自由意志の※[#「鬥<((卯/亞の下半分)+斤)」、第3水準1−94−31]塲《とうぢやう》なり。美は醜と闘ひ、善は悪と争ふ、或は桂冠を戴きて此の舞台より歴史の或一隅に遷《うつ》り去るあり、或は傷痍を負ふて永く苦痛の声を留むるあり。甲去れば乙来り、乙去れば丙又た来る。一往一来、頻又頻を極めて、而して宇宙は悠然として更に他の新客を待てり。プレトー去つて遠し、シヱーキスピーア去つて又た還《かへ》らず、ウオーヅオルス逝《ゆ》けり、カアライル逝け
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