実行的道徳
北村透谷
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)時辰機《とけい》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から2字上げ](明治二十六年四月)
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
(例)悉《こと/″\》く
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人は地に生れたるものにして、天を家とするものならず、人生は社会周辺の事実に囲まれてあるものなれば、性行を経綸すべき倫理なるもの一日も無かるべからざるなり。社会は時辰機《とけい》の如し、一部分の破損は以て全躰の破損となり、遂には運行を止《とゞ》むるに至るべし。之を以て孰《いづ》れの邦国にも孰れの社会にも必らず何等かの倫理あるなり。近頃実際的道徳の要を知りはじめたる、我日本は、此際深く自ら省みざるべからず。
然《しか》れども世間往々にして実際的道徳を誤解するものあり、唯だ其行ひにのみ重きを置きて其の心を問はざるが如き傾きあり。客観的人生にのみ心酔して主観的人生を顧みざるが如き趣きあり。イヱスの道徳は其平々坦々たるところに無量の深味あるが故に尊き
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