《おも》つて、つい飮《の》む、飮《の》めば飮《の》むほど心配《しんぱい》する。何《なん》の事《こと》アねへ態々《わざ/\》心配《しんぱい》して見《み》たさに飮《の》む樣《よう》なもんで一盃《いつぱい》が一盃《いつぱい》と重《かさ》なれば心配《しんぱい》も重《かさ》なつて來《く》る」
[#ここで字下げ終わり]
何《なん》ぞ醉漢《すいかん》の心中《しんちう》を暴露《ばくろ》するの妙《みよう》なる。更《さら》に進《すゝ》んで我妻《わがつま》を説《と》き我娘《わがむすめ》を談《だん》じ、娘《むすめ》が婬賣《いんばい》する事《こと》まで、慚色《はづるいろ》なく吐《は》き出《い》づるに至《いた》りては露國《ロコク》の社界《しやかい》亦《ま》た驚《おどろ》くべきにあらずや。而《しか》して其《そ》の再官《さいくわん》の事《こと》に説《と》き及《およ》ぶや、
[#ここから1字下げ]
「又《ま》た或時《あるとき》は僕《ぼく》が寢《ね》て仕舞《しま》つてからカテリーナ、イワーノウナは何《なん》だか嬉《うれ》しくて堪《たま》らなくなつたと見《み》えて一週間前《いつしうかんぜん》に大喧嘩《おほげんくわ》した事《
前へ 次へ
全11ページ中6ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
北村 透谷 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング