しようかい》し、その冷笑《れいしよう》と其《その》怯懦《きようだ》を寫《うつ》し、更《さら》に進《すゝ》んで其《その》昏迷《こんめい》を描《ゑが》く。襤褸《らんる》を纏《まと》ひたる一大學生《いつだいがくせい》、大道《だいどう》ひろしと歩《あ》るきながら知友《ちゆう》の手前《てまへ》を逃《に》げ隱《かく》れする段《だん》を示《しめ》す。
高利貸《こうりかし》の老婦人《ろうふじん》、いかにも露西亞《ロシア》は露西亞《ロシア》らしく思《おも》はれ、讀者《どくしや》をして再讀《さいどく》するに心《こゝろ》を起《おこ》さしむ。居酒屋《いざかや》に於《お》ける非職官人《ひしよくくわんじん》の懺悔《ざんげ》?自負《じふ》?白状《はくじやう》と極《きはめ》て面白《おもしろ》し。その病妻《びようさい》の事《こと》を言《い》ひて、
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「所《ところ》が困《こま》つた事《こと》にア身躰《からだ》が惡《わる》く、肺病《はいびよう》と來《き》てゐるから僕《ぼく》も殆《ほと》んど當惑《とうわく》する僕《ぼく》だつて心配《しんぱい》でならんから其《その》心配《しんぱい》を忘《わす》れやうと思
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