《し》は躬《みづか》ら露國《ロコク》平民社界《へいみんしやくわい》の暗澹《あんたん》たる境遇《けふぐふ》を實踐《じつせん》したる人《ひと》なり、而《しか》して其《その》述作《じゆつさく》する所《ところ》は、凡《およ》そ露西亞人《ロシアジン》の血痕《けつこん》涙痕《るいこん》をこきまぜて、言《い》ふべからざる入神《にうしん》の筆語《ひつご》を以《も》て、虚實《きよじつ》兩世界《りようせかい》に出入《しゆつにう》せり。ヒポコンデリア之《こ》れいかなる病《やまい》ぞ。虚弱《きよじやく》なる人《ひと》のみ之《これ》を病《や》むべきか、健全《けんぜん》なる人《ひと》之《これ》を病《や》む能《あた》はざるか、無學《むがく》之《これ》を病《や》まず却《かへ》つて學問《がくもん》之《これ》を引由《いんゆう》し、無知《むち》之《これ》を病《や》まず、知識《ちしき》あるもの之《これ》を病《や》む事《こと》多《おほ》し。人生《じんせい》の恨《うらみ》、この病《やまい》の一大要素《いちだいようそ》ならずんばあらじ。
開卷第一《かいかんだいゝち》に、孤獨幽棲《こどくゆうせい》の一少年《いつしようねん》を紹介《
前へ
次へ
全11ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
北村 透谷 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング