に之《これ》を紹介《せうかい》するの功《こう》不知庵《フチアン》に多《おほ》しと言《い》はざる可《べ》からず。
 露國《ロコク》は政治上《せいぢぜう》に立《たち》て世界《せかい》に雄視《ゆうし》すと雖《いへど》もその版圖《はんと》の彊大《きようだい》にして軍備《ぐんび》の充實《じゆうじつ》せる丈《だけ》に、民人《みんじん》の幸福《こうふく》は饒《ゆたか》ならず、貴族《きぞく》と小民《せうみん》との間《あいだ》に鐵柵《てつさく》の設《もう》けらるゝありて、自《おのづ》からに平等《びようどう》を苦叫《くけう》する平民《へいみん》の聲《こゑ》を起《おこ》し、壯烈《そうれつ》なる剛腸《ごうちよう》屡《しばし》ば破天荒《はてんこう》の暴圖《ぼうと》を企《くわだ》て、シベリアの霜雪《そうせつ》をして自然《しぜん》の威嚴《いげん》を失《うしな》はしむ。
 乳《ちゝ》を混《こん》ぜざる濃茶《のうちや》を喜《よろこ》び、水《みづ》を割《わ》らざる精酒《せいしゆ》を飮《の》み、沈鬱《ちんうつ》にして敢爲《かんい》、堅《かた》く國立《こくりつ》の宗教《しゆうきよう》を持《ぢ》し、深《ふか》く祖先《そせん》の
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