は如何に斧鉞《ふゑつ》を加へて盛衰興亡の運命を悟らしむるも、其の以太利たるは依然として同じ、独逸《ドイツ》も亦た斯の如し、仏蘭西《フランス》も亦た斯の如し。国民の元気の存する処に其の予定の運命あり。死すべきか、生くべきか、嗚呼《あゝ》一国民も亦た無常の風を免れじ、達士世を観ずる時、宜《よろ》しく先づ命運の帰するところを鑑《かんが》むべし、若し我が国民にして、果して秋天霜満ちて樹葉、黄落の暁にありとせんか、須《すべか》らく男児の如く運命を迎ふべし、然り、須らく男児の如く死すべし、国民も亦た其の天職あるなり、其の威厳あるなり、其の死後の名あるなり、其の生前の気節あるなり。之を破らず、之を折らず、而して能く生存競争の国際的関係を、全うし得るの道ありや否や。
 デモクラシー(共和制)を以て、我国民に適用し、根本の改革をなさんとするが如きは、極めて雄壮なる思想上の大事業なり、吾人は其の成功と不成功を論《あげつ》らはず、唯だ世人が如何に冷淡に此の題目を看過するかを怪訝《くわいが》しつゝあるものなり。吾人は寧ろ進歩的思想に与《くみ》するものなり、然りと雖、進歩も自然の順序を履《ふ》まざる可からず、進
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