歩は転化と異なれり、若し進歩の一語の裡に極めて危険なる分子を含めることを知らば、世の思想家たる者、何ぞ相戒めて、如何に真正の進歩を得べきやを講究せざる。国民のヂニアスは、退守と共に退かず、進歩と共に進まず、その根本の生命と共に、深く且つ牢《かた》き基礎を有せり、進歩も若し此れに協《かな》はざるものならば進歩にあらず、退守も若し此れに合《あは》ざるものならば退守にあらず。
(6)[#「(6)」は縦中横] 地平線的思想
政事の論議に従事し、一代の時流を矯正して、民心の帰向を明らかにする思想家、素より偏見|僻説《へきせつ》を頑守し、衆を以て天下を脅かす的《てき》の所謂《いはゆる》政事家なるものに比較すべきにあらず。然れども其の説くところ概《おほむ》ね卑近にして、俚耳《りじ》に入り易きの故を以て、人之を俗物と称す。吾人は、斯の如き俗物の感化が、今の米国を造り、今の所謂文明国なるものを造るに於て大なる力ありし事を信ずる者なり。凡そ適切なる感化を民衆に施こして、少歳月の中に大なる改革を成就すること、多くは謂ふ所の俗物なるものゝ力にあり、マコーレーも或意味に於ては俗物なり、ヱモルソン
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