。斯の如く余はインヂビジユアリズムの信者なり、デモクラシーの敬愛者なり。然れども、
(5)[#「(5)」は縦中横] 国民の元気
国民の元気は一朝一夕に於て転移すべきものにあらず。其の源泉は隠れて深山幽谷の中に有り、之を索《もと》むれば更に深く地層の下にあり、砥《と》の如き山、之を穿《うが》つ可からず、安《いづ》くんぞ国民の元気を攫取《くわくしゆ》して之を転移することを得んや。思想あり、思想の思想あり、而して又た思想の思想を支配しつべきものあり、一国民は必らず国民を成すべき丈の精神を有すべきなり、之に加ふるに藪医術を以てし、之を率ゆるに軽業師の理論を以てするとも、国民は頑として之に従ふべからざるなり。渠《かれ》を囲める自然は、渠に与ふるに天然の性情を以てし、渠に賦するに、特異の性格を以てす、是等の性情、是等の性格は、幾千年の間その国民の活動の泉源たりしなり、その国民の精神の満足たりしなり。国民も亦た一個の活人間なり、その中に意志《ウイル》あり、その中に自由《リバーチー》を求むるの念あり、国家てふ制限の中に在て其の意志の独立を保つべき傾向を有せずんば非ず。以太利《イタリー》
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