鬼心非鬼心
(実聞)
北村透谷
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)仮の宿《やどり》と
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)この夏|霎時《しばらく》の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から2字上げ](明治二十五年十一月)
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)るゐ/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
悲しき事の、さても世には多きものかな、われは今読者と共に、しばらく空想と虚栄の幻影を離れて、まことにありし一悲劇を語るを聞かむ。
語るものはわがこの夏|霎時《しばらく》の仮の宿《やどり》とたのみし家の隣に住みし按摩《あんま》男なり。ありし事がらは、そがまうへなる禅寺の墓地にして、頃は去歳《こぞ》の初秋とか言へり。
二本榎《にほんえのき》に朝夕の烟も細き一かまどあり、主人《あるじ》は八百屋にして、かつぎうりを以《も》て営《いとなみ》とす、そが妻との間に三五ばかりなる娘ひとりと、六歳《むつ》になりたる小児とあり、夫《つま》は実直なる性《さが》なれば家業に懈《お
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