や。
欧洲の理想界に形而上派の興《おこ》りてより、漸くにして古代の崇高なるプラトニックの理想的精神を復活せしめ、爾来《じらい》欧洲の宗教界、詩文界に生気の活動し来りたるを見る。律法儀式にのみ拘泥《こうでい》したる羅馬《ローマ》教の胎内よりプロテスタニズム生れ出で、プロテスタニズムよりピユリタニズム生じ、ピユリタニズムによりて、長く人心を苦しめたる君主専制の陋弊《ろうへい》を破りたる自由の思想の威霊あるものを奮興したり。或は一転して旧来の迷夢を攪破したるボルテイアとなり、バイロンとなり、ゴヱテとなり、カアライルとなり、自由神学派となり、唯心的傾向となりて、今日に至るまでの思想界の変遷はおもしろきこと限りなし。
然れども凡《すべ》て是等の変遷を貫ぬける一条の絃の存するあるは、識者の普《あま》ねく認むるところなり。之を何とか為す、曰く、皮想的信仰破れて、心を以て基礎とする思想及び信仰の漸く地平線上に立ち上りて、曙光|炳灼《へいしやく》たるものある事是れなり。凡ての批評眼を抉《くじ》り去りて後に聖経《せいけい》を解《と》かむとするは、むかし羅馬教の積弊たりしものを受けて今日の浅薄なる聖経の
前へ
次へ
全16ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
北村 透谷 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング