我牢獄
北村透谷

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)然《しか》れども

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)天性|怯懦《けふだ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「りっしんべん+(「夢」の「夕」に代えて「目」)」、第4水準2−12−81]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)拘々《こう/\》
−−

 もし我にいかなる罪あるかを問はゞ、我は答ふる事を得ざるなり、然《しか》れども我は牢獄の中《うち》にあり。もし我を拘縛《こうばく》する者の誰なるを問はゞ、我は是を知らずと答ふるの外なかるべし。我は天性|怯懦《けふだ》にして、強盗殺人の罪を犯すべき猛勇なし、豆大の昆虫を害《そこな》ふても我心には重き傷痍《しやうい》を受けたらんと思ふなるに、法律の手をして我を縛せしむる如きは、いかでか我が為《な》し得るところならんや。政治上の罪は世人の羨《うらや》むところと聞けど我は之を喜ばず、一瞬時《いちじ》の利害
次へ
全12ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
北村 透谷 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング