吾人もし、我邦は世界の極端にあるが故に、世界の出来事と世界の運命には関《かゝは》り知るところあらずと言ひて、この高潔偉大なる事業に力を借すことなければ、彼等果して我を何とか言はむ。
直接に痛痒《つうやう》を感ぜざればとて、遠大なる事業を斥《しりぞ》くべきにあらず、況んや欧洲のみに戦争の毒気|盈《み》つるにあらずして、東洋も亦た早晩、修羅《しゆら》の巷《ちまた》と化して塵滅するの時なきにしもあらず、いかんぞ対岸の火を見て、手を袖にするが如きを得んや。
且つ夫れ、東洋と西洋といづれの業《わざ》にも相離反するを免かれざるは、思想あるものゝ太《いた》く憂ふるところなり、つひには東西の相共に立つ可からざるは源平二氏の両立すること能はざるが如くなりはてんは、うたてからずや。この時にあたりて、この平和協会の事業の如く、東西の思想家が心を一にし、力を協《あ》はせて、神聖なる道心を以て、相提携するを得るは、豈《あに》快なりと言はざる可けんや。われらは宗教を以て、講談の囈語《げいご》にて終るべきものとは思はず、正統非正統の論争、遂に黒白を分つの要あるを知らず、吾人の前に横《よこた》はれる実際問題の、斯
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