の》非職官吏《ひしよくくわんり》を殺《ころ》しつゝあるにあらずや非職官吏《ひしよくくわんり》の放蕩懶惰《はうとうらんだ》は其《その》愛《あい》らしき妻《つま》を殺《ころ》しつゝあるにあらずや其《その》無邪氣《むじやき》の娘《むすめ》を殺《ころ》しつゝあるにあらずや、婬賣と名け肺病と名け[#「婬賣と名け肺病と名け」に白丸傍点]、※[#「りっしんべん+隋」、109−下−4]慢と名つくるもの[#「※[#「りっしんべん+隋」、109−下−4]慢と名つくるもの」に白丸傍点]、これ實に精神的に死してあるなり殺してあるなり[#「これ實に精神的に死してあるなり殺してあるなり」に白丸傍点]、悲哀懊惱の幽暗なる事は[#「悲哀懊惱の幽暗なる事は」に白丸傍点]「死[#「死」に白丸傍点]」の幽暗なるよりも多きなり[#「の幽暗なるよりも多きなり」に白丸傍点]。讀者《とくしや》余《よ》が言《げん》を信《しん》ぜずば罪と罰に就《つ》きて、更《さら》に其他《そのた》の記事《きじ》を精讀《せいどく》せられよ、思《おも》ひ盖《けだ》し半《なかば》に過《す》ぎんか。
余が前號《ぜんごう》の批評《ひゝよう》にも云《い》ひし如《ごと》く罪と罰とは最暗黒《さいあんこく》の露國《ロコク》を寫《うつ》したるものにてあるからに馬琴《バキン》の想像的侠勇談《そうぞうてきけふゆうだん》にある如《ごと》く或《ある》復讎《ふくしゆう》或《あるは》忠孝等《ちゆうこうとう》の故《ゆえ》を以《も》て殺人罪《さつじんざい》を犯《おか》さしめたるものにあらざること分明《ぶんめい》なり。最暗黒《さいあんこく》の社會《しやくわい》にいかにおそろしき魔力の潛むありて[#「いかにおそろしき魔力の潛むありて」に白丸傍点]學問《がくもん》はあり分別《ふんべつ》ある腦膸《のうずい》の中《なか》に、學問《がくもん》なく分別《ふんべつ》なきものすら企《くわだ》つることを躊躇《ためろ》ふべきほどの惡事《あくじ》をたくらましめたるかを現《あら》はすは蓋《けだ》しこの書《しよ》の主眼《しゆがん》なり。而《しか》して斯《かく》の如《ごと》く偶然の機會よりして偶然の殺戮を見得るが故に[#「偶然の機會よりして偶然の殺戮を見得るが故に」に白丸傍点]、一|見《けん》して淺薄《せんはく》にして原因《げんいん》もなきものゝ種《たね》なる、この書《しよ》の眞價《しんか》は
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