にためたまゝ、又居眠りを始めた。
爐にくべてある木が時々パチ/\とはねた。その音で、母親が時々、少し自分にかへつた。源吉はもの[#「もの」に傍点]も云はずに、芋を喰つてゐた。何か考へ事でもしてゐるやうに、口を機械的にしか動かしてゐなかつた。
柱時計が四つ、ゆるく、打つた。母親は、びつくりして、今度は本當に眼をさました。そして、くるつと圓くなつて寢てゐる由をゆり起した。由は眼をさますと、不機嫌に、ねじけ始めた。
「ホラ、校長先生!」母がどなつた。
由はギヨツとしたやうに、四圍《あたり》を見た。
「うそ、うそ! うそ※[#感嘆符二つ、1−8−75]――うそ※[#感嘆符三つ、70−8]……」とう/\由が本氣に泣き出してしまつた。
「この野郎。早く小便たれてこ。表さ行《え》つて。」
由は中々立たなかつた。三度も、四度も云はれて、表へ立つた。が、戸を少し細目にあけると、そこからチンポコだけ出して、勢ひよく表へやつた。
「又、表さ出ねえで。なんぼ癖惡いんだか。――あどから臭せくツて!――赤びつき[#「びつき」に傍点](赤子)でもあるまいし。えゝか、あとから兄から、うんブンなぐられるべ!」
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