れかゝつたりした。二人は息をハア/\させて、二十分位あとには、身體中汗みどれになつて、それが湯氣になつて出た。それでも、やうやくひかさつてきた。さう、少しでもなると、二人は調子よく元氣づいてきて、「エンヤ、エンヤ」の掛聲をかけてひき[#「ひき」に傍点]出した。それからはどん/\引かさつた。力がさう要らなくなつた。
源吉は、一寸身體を休めると、「勝、棍棒は、あるべ?」ときいた。勝が「うん」と云ふと源吉はエヘ、エヘ/\と笑つた。「たまらねえぞ、畜生、野郎。」
天井で、水桶でもひつくりかへしたやうに、無茶に、雨が地面をたゝきつけ、はねかへり、ゴン/\音をして流れてゐた。眞暗なのにも拘らず、雨のために、妙に白つぽい明るさがたゞよつてゐた。
と、「バヂヤ/\/\」と水をはね返す音が起つたが、すぐそれツ切りだつた。一寸すると、又「バヂヤ/\」と水がはねかへつた。それからすぐ續いて、今度はもつと大きく「バヂヤ/\」となつた。網がだん/\引き寄せられてきた。
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それ引いた、それ引いた。
女子《あねこ》の××を、それ引いた、それ引いた。
それ引いた、それ引いた、
嬶の××
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