の拍子に、手にとるやうに、間近かに聞えたりした。半鐘は、プウーン、プウーン、とかすかに、うなつてゐるやうに聞えた。
「まだ足りねえや。」
 源吉は獨言をすると、今度はしつかりした足取りで、暗い石狩平野の雪道を歩き出した。
「まだ足りねえぞ、畜生!」
[#地から2字上げ](一九二八・四・二六)



底本:「防雪林・不在地主」岩波文庫、岩波書店
   1953(昭和28)年6月25日第1刷発行
   1959(昭和34)年2月15日第5刷発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
※底本では「それから、勝が裏口にまはつた。〜瞬間、なつたのを感じた。」の行が天付きになっています。
※「銭」と「錢」の混在は底本通りです。
入力:山本洋一
校正:林 幸雄、小林繁雄
2006年7月20日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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