えつて――そのくせ、自分であつたらに行きたがつたこと忘れてよ。」
外では、時々豆でもぶツつけるやうに、雨が横なぐりに當る音がした。その度にランプが搖れて、後の障子に大きくうつつてゐる皆の影をゆすつた。――延びたり、ちゞんだりした。
由は飯を食ひ終ると、焚火に、兩足を立てゝ、繪本を見た。小指の先程のチンポコ[#「チンポコ」に傍点]を出したまゝだつた。
「兄、狼見たことあるか。」
「見たことねえ。」
「繪で見たべよ。」
「ん。」
「どつち強い。」
「強え方強えべよ。」
「いや/\、駄目――え。」
源吉は大きな聲を出して笑つた。
樹の根ツこをくべてある爐の火が、節の處に行つたせゐか、パチ/\となつて、火が爐の外へはねとんだ。
一つが由の「朝顏の莟みたいな」チンポコへとんだ。
「熱ツ々々……※[#感嘆符二つ、1−8−75]」
由は繪本をなげ飛ばすと、後へひつくりかへつて、着物をバタ/\とほろつた。
「ホラ、見ろ、そつたらもの向けてるから、火の神樣におこられたんだべ。馬鹿。」
「糞、ううーうん、/\、」
由が半分泣きさうにして、身體をゆすつた。
せきとお文は臺所に、ローソクを立て
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