これから村がダンダン底へ落ちこんで行くと、キヌのような女は、殖えらさる一方だ。
健ちゃのことはよく聞きたがるが、節のこともあるらしいので、知らせていない。
「小樽」と「S村」――上ッ面から見ただけでも、前に云ったことがハッキリ分る。――製缶工場、拓殖ビルディング、一流銀行、××工場、運河、倉庫、公園、大邸宅、自動車、汽船、高架桟橋《コール・ピーヤー》……それ等が、まるで大きな渦巻のように凄じく入り乱れ、喚いている。その雑沓する街を歩いていると、世界の何処に、あの泥だらけの、腰のゆがんだ百姓というものがいるか、と思わせられる。草、山、稲、川、肥料、――これだけが農村だ!――だが、小樽の人は本当の百姓を眼の前で見たことが、一度だって無いかも知れない。
又書く。
ただ俺達は何時迄も「百姓」「百姓」ッて誤魔化されていないことだ。――これだけが大切なことだ。みんなに、よろしく。
こんな意味のことが書かれていた。――健は飯を食いながら、丁寧にそれをもう一度読み直した。それから、それを持って阿部のところへ出掛けて行った。
[#改段]
八
「百姓嫌になった」
雨が
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