河近くは「南瓜」や「唐黍」の畑になっていたが、畑のウネ[#「ウネ」に傍点]とウネ[#「ウネ」に傍点]の間に、大きな石塊《いしくれ》が赤土や砂と一緒にムキ出しに転がっていた。石狩川が年一度、五月頃氾濫して、その辺一帯が大きな沼のようになるからだった。――畑が尽きると、帯の幅程の、まだ開墾されていない雑草地があり、そこからすぐ河堤になっていた。子供達は釣竿を振りながら、腰程の雑草を分けて、河へ下りて行った。
 河向うは砂の堤になっていて、色々な形に区切られた畑が、丁度つぎはぎした風呂敷のように拡がっていた。こっちと同じ百姓家の歪んだ屋根がボツ、ボツ見えた。

     「移民案内」

「内地の府県に於ては、自作地は勿論、小作地と雖も新に得ることは仲々困難であるのに反して、北海道に移住し、特定地の貸付をうけ、五ヵ年の間にその六割以上を開墾し終る時は、その土地を無償で附与をうけ、忽ち五町歩乃至十町歩の地主[#「地主」に傍点]となるを得、又資金十分なるものは二十町歩土地代僅か八百円位で、未墾地の払下げを受け得べく、故に勤勉なるものは、移住後概して生活に困難することなし……。」(「北海道移住案内」
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