、生活費用を見積ると、そこから上る六、七斗の小作料では引き合わなくなってきていた。――田に修繕を加えて、少しでも上り高を多くしようとすれば、どうしてもそれを拓殖銀行へ抵当に入れて「年賦償還」の貸付けを受けなければならない。だが、そうすれば、今度は益※[#二の字点、1−2−22]引き合わなくなる。大地主の存在がジリジリと圧迫していた。小作人より苦しんでいた。その癖、俺は地主様だという気持を、どうしても無くしない。どんなにヒッつぶれても、小作人達と同じ人間にされてたまるもんか、そう思っている。
健の家と川を隔てて向い合っている越後から移転してきている広瀬がそれだった。――首がギリギリに廻らなくなっているのに、土地も自分のものでなくなっているのに、自分の子供が由三達と遊ぶことを嫌った。――「なんぼ成り下がったって……。」
荒川は硫黄分でインキのように真黒になっているお茶を飲みながら、内地の農民の話をした。――内地では、小作争議で「ドンツキ」をやる。小作人が地主を無理矢理ひっぱってきて、逆さにつるして灌漑溝の水につけたり、上げたりやる。然し北海道のように、小作と一緒に村に住んでいる地主がい
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